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ドライブ・マイ・カー
2021年08月30日
濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」(原作・村上春樹さん)、期待を遥かに上回る傑作でした。
代表作の「ハッピーアワー」や「親密さ」でもみられた、映画内に演劇やワークショップのプロセスを取り入れてフィクションとフィクション、またはフィクション/ノンフィクションのあわいを曖昧にする手法が以前にも増して巧妙に冴え渡り(俳優・演出家の主人公が車中でいつも流している、カセットテープに吹き込まれた「ワーニャ伯父さん」のテキストが物語に複雑に絡み合う演出は鳥肌が立ちます)、また、登場人物の語りのことばだけで情景を現出する演出が出色です。過去のトラウマが重要なテーマの映画ですが、回想の「語り」はあっても回想シーンはなく(常に現在時制)、このため観ている側も自然と「話を聞く」ことに集中していき、劇中の聞き手と自分が同化していくような奇妙な感覚に襲われます。
ほぼ3時間の上映時間はハードル高めですが、ぜひとも一度体験をおすすめしたい映画です。「体験」という言葉がこれほどふさわしい映画も中々ないと思います。
Y・R
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